創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(169)フォルクスワーゲンの広告(71)

製品の全貌を見せないで、製品を語るという、凄腕のクリエイティビティ・シリーズ---第7弾が出た1969年8月某週の『ライフ』には、「あっ」と息をのんだ。第8弾は、その4年ほど前の新聞の全面広告。

「やったぁ!」 「ヤラレタッ!」 「生まれてなくてヨカッタ!」 「ゴツン!(自分の頭を殴る音)」とお感じになったら、星マークの添付 ☆クリック→ をお忘れなく。


2007.06.14. この[VWビートル]シリーズのを飾らせ、2008.06.26. 54) にも再登場。そして今回は第7弾として---あるいは、1969年を代表する広告として。 ()をクリックしてみてください。



不恰好ですが、運んでってくれますよね。




It's ugly, but it gets you there.



私たちのイメージ。


むかしむかし、ひとりの若いご婦人が、払たちの工場を訪ねてきました(訪ねてきてくださる人が多いほど、うれしいものです)。
「可愛い、小さな車だこと」と、彼女がいいました、「まるで、かぶと虫ね」
私たちは、いま堅実なジックリ型です。
でも、その頃の私たちは、馬力をあげるためにはブレーキ効率をどれくらい大きくしたらいいか、というようなつまらない問題に熱中していたものでした。
彼女の言葉に、私たちはドキッとしました。
そこで、いろいろ調べてみました。そして、多くの人びとが彼女と同じ感じをもっていることを知りました。
「かぶと虫」という言葉を、悪い意味で使うのではなく、つねに親愛の情をこめて使っているのだということもわかりました。
払たちは、このニックネ-ムに、喜びを感じるようになりました。
この愛称は、払たちの車づくりの態度について、いいつくしてくれるように思います---不言実行とか、骨惜しみしない勤勉さとか、虚飾のない誠実さ、などを---。
好感をもたれようとして、気狂いじみたことをする人びともいます。
私たちはただ、フォルクスワーゲンを、実用車として、よりよくしていこうと努力をするだけです。
こうして、払たちは、私たち自身のイメージをつくったのです。




Our image.


Once upon a time, a young lady visited our plant. (In our view, the more the merrier)
"What a sweet little car" she said. "It looks just like a beetle."
Now we're a pretty down-to-earlh bunch.
At that moment we were figuring how much larger our brake-area would have to be if we stepped up our horsepower.
She stopped us cold.
After we'd made some discreet inquiries we found out that a good many people shared her opinion.
But we also found out that people never said "beetle" nastily.
Always affectionately.
So we grew resigned to our nickname, and finally rather pleased with it.
It seems to say a lot about our attitude to carmaking: determined, painstaking, unpretentious.
After all, some people try like mad to create a favorable impression.
We'd simply tried to make the Volkswagen a practical car.
And we'd gotten our very own image.