創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(168)フォルクスワーゲンの広告(70)

製品の全貌を見せないで、製品を語るという、凄腕のクリエイティビティ・シリーズ---第6弾は、極めつき。

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2007年6月18日分(3)の再録



VWはいつも工場で小さなトラブルに巻きこまれています。


このがらくたは、フォルクスワーゲンになるべく進んでいたときに、石の壁にぶっつけられてしまってできたものです。
きびしい検査員がそうしたのです。
彼らは、生産ラインからチェックした部品を抜き出して、20台分の車、あるいは貨車2両分のスクラップをつくりだしています。
各工程でフォルクスワーゲンを文字通りバラバラにしてしまう検査員が何千人もいるのです。
フェンダーに小さなひっかき疵があれば、彼らに大きな疵つけられてしまいます。
バンパーに小さな切り傷があってもぶっつけられてしまいます。
10人の作業員がやったことを、1人の検査員が台無しにしてしまうのです。そして塗装段階では、1台のVWの点検に8人の検査員があたっています。
とはいえ、この検査の仕事があるのは、作業がルーズに行われているからではないのです。
VWをつくる人たちは、十分に注意してやっています。検査員がそれを完璧に仕上げるのです。




Every now and then a VW runs into a little troble at the factory.


That hunk of junk was on its way to being a Volkswagen, when it ran into a stone wall: a bunch-nosed
inspectors who pul enough parts off the line every day to make the equivolent of 20 cars. Or 2 freight cars full of scrap.
There are thousands of inspectors who literally pick every Volkswagen to pieces, every step of the way.
If there's a little scratch in a fender, it gets scratched, if there's a little nick in a bumper, it gets bumped.
Wherever ten people are doing something, there's an inspector to undo it. For the paint job alone, no less than 8 inspectors check every VW.
All that inspection doesn't mean the work isn't done carefully. the men who make the VW make it very well. The inspectors just make it perfect.


VWビートルのキャンペーンの中で、「みごとな表現!」と絶賛しながら、ひそかに「意識的ミスリード」とつぶやいている唯一の広告が、これ!  VWビートルはどの部分でも、部品が揃って取替え可能---と主張してるから、検査不合格の部品だけ、取り替えれているはず。また、コピーをよく読むと、そう書いてもいる。が、まるでその1台をくしゃくしゃにしたみたいな量の鋼板の塊の写真である。表現としては最高。表現の究極は針小棒大である。つまり、ゆるされる誇張---べつの言葉では---芸術。

”Lemon "神話は、2007.11.15シンプル・ヘッドライン(←クリックをご再読ください。