創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(132)『コピーライターの歴史』(10)

これまでの米国の広告専門家の話は、日本の若いクリエイターにとっては、大学の老教授の講義みたいで、隔靴掻痒(かっかそうよう)---「時代が違うんじゃない?」って感じを持つ人もいて、もひとつピンとこない面もあったかとおもいます。まあ、老教授の講義の滋味は、受け取る側のレベルによって異なるもの。しかし、今日紹介するワトキンスの本「The 100 greatest advertisements」は、60年後の今日でも、米国をはじめ、世界各国のクリエイターの座右で、すぐれた広告の実例集---いうなればスタイル・ブックの書となっているものです。ぼくがこの書を森永製菓の俊敏コピーライター・村瀬 尚さんからいただいたのは47年前---大阪から東京に出てきたその時で、井の中の蛙、大海を知るっての、教えてくださいました。すごい本です。この本が表紙のみを新たにして、いまでも求められることを転法輪(広告プロデューサー)さんが見つけだしてくださいました。転法輪さんに感謝。


『コピーライターの歴史』(10)
ジュリアン・L・ワトキンスの集大成


いままでに紹介した人たちのほとんどは、コピー原則を解明し、それを本にした人たちです。
ワトキンス(Julian Lewis Watkins)が、1949年に編集した『すばらしい広告100点 The 100 greatest advertisements』は、趣きをまったく異にした愉快な本です。これは、題名が示すとおり、アメリカに広告の歴史がはじまってからこの年までに発表された数十万、いや数千万点の広告の中から効いた広告、話題の広告を100点だけ選んで一冊の本にまとめたものです。その中には1890年にイーストマン氏自身によって書かれたイーストマン・コダック・カメラのための「あなたはボタンを押すだけ・・・・・・あとは私たちがやります」という、きわめて直截な広告や、アルバート・ラスカーをして「広告にセックスを入れた」と嘆ぜしめたトンプソン代理店制作のウッドベリ化粧石けんの広告「さわってみたくなるほどのお肌」が「レディス・ホーム・ジャーナル」1911年5月号に載った当時の裏話など、私たちが、これまで伝説として聞き伝えている名広告のかずかずの図版もふくまれています。
この本は、調査と数字で固められたコピー原則の本と違って、見る人をして気持ちをふるい立たせるとともに、なぜこの10年、20年も昔の広告をいま見ていて自分はこんなに興奮するのか? この広告のどこにその魔力が秘められているのかを、探究心の強いコピーライターに探らせるだけのものをもっています。つまり、数百、数千人の若者が、この本によって既成の広告界にたいする挑戦者として育っていったことでしょう。
その意味では、ワトキンスこそ、近年におけるもっとも悪質で巧妙な扇動家であり、かつもっとも地道で有益な蒐集家であるといえましょう。


>>『コピーライターの歴史』目次


chuukyuuからの助言
幸いにも、今日は日曜日。土日には、このブログへのアクセスは、半減する傾向がつづいています。平日のアクセス数は250〜300件。
今日---日曜日のこの日記も、半分の人は見逃すはず。だから、あなたにとっては、幸運。購読希望者が殺到(?)すると、入手できない場合もありますからね。


"The 100 greatest advertisements"
英語はニガ手? いい広告の半分は、言葉が通じなくても、感性が豊かなら、ほとんど察しがつく。察しがつかない人は、コミュニケーターとしての才能が薄いのかも。ゴメンなさい。 


転法輪さんが調べてくださった購入法。

先日、いっしょにチェックしたのは、アメリカのAmazon.comですが、日本のアマゾンにもありました!
1,636円でした。取り寄せになるので、3〜5週間かかるようですね。
(130点!ほど傑作広告の図版が載っていると書いてありました)。

こちらのページ右側にある「ショッピングカートに入れる」から、順に進んでいくと購入できます。


はてな」では、
The 100 Greatest Advertisements 1852-1958: Who Wrote Them and What They Did
このタグを入れると、本のタイトル+アマゾンへのリンクが設定できます。
欲しい人は、すぐに買うことができます。
この形がよいのではないでしょうか? 

chuukyuu断言ぼくは、アフリエイトはやってません。