創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(113)ソニーテレビの広告(14)

割り込みです。
昨日、ご紹介した拙著『売る』日本経済新聞社 1971.3.10刊 絶版) の「新しい生活習慣を売る」の項に、「ソニーテレビは寝室テレビ?」という文章ブロックがあったので、広告企画の実例として引用します。
とにかく、ソニーはラッキーにも、DDBに広告をまかせることができた。広告代理店選定に成功したわけである。しかし、それだけで広告キャンペーンが成功するわけはではない。広告代理店の選定は広告主側の首脳陣の仕事だが、すぐれた広告をつくるためには担当者同士の情報交換がうまくいかなければならない。
引例の「ぽんぽんテレビ」は、プリタニカ大百科事典の1966年年鑑にも写真入りで紹介されているほどの傑作広告の一つだが、米国ソニー社に駐在していた卯木肇氏がこの広告が生まれたいきさつを、あるところで公開している。
それによると、米国で販売されているソニーテレビには保証書とともに購入者への質問状がつけられていて、返送されてきた質問状は東京のソニー本社へ回送分析されて、その結果が米国ソニー社へフィード・バックされるシステムになっているのだそうだ。 その資料によって、5インチのソニーテレビの購入者の大部分が寝室用として使っていることがわかった。そこで、その旨をDDB側に情報として流し、クリスマス時期の広告のアイデアとして使えないかと申し入れたというのである。そしてソニー側の担当者による数回の意見交換会議の後に生まれたのが「ぽんぽんテレビ」だった。



ぽんぽん(おなか)テレビ


胴回りが38〜45インチの人のための5インチ・ソニー(もっとも小さいポンポンは4インチがあります)。非耐熱性で寿命が長いトランジスタ23石と伸縮自在のアンテナが、ちらつかない画像をつくります---あなたが笑っておなかが揺れても大丈夫。ソニーは、AC電源プラグと、充電可能なバッテリー・パックつきです。奥さんがお眠みになれるようにイヤホンもついています。テレビの美しさをこの小ささにセットしています。テレビで満腹になったら、枕の下にも隠せます。
軽量5インチ ソニーテレビ




Tummy Television


The 5 inch Sony, for waist size 38 to 46.(For smaller tummies, but buy the 4 inch set.) Our 32 non-heating, long living transistors plus our telescopic antenna give you flicker-free reception−even if you jiggle when you laugh. The Sony works on AC wall plug or clip-on batterypack. So that your wife can sleep, we also include a personal ear plug. The beauty of TV set this small: when you've had a bellyful of television, you hide it under the pillow.
Lightweiht 5 inch SONY TV


この広告のクリエイティブ・チームのアートディレクター---レン・シローイッツ氏自身による解説は、2007.10.18に掲出しています。