創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(100)フォルクスワーゲン・ステーション・ワゴンの広告(26)

[息抜きタイム]がついに100回! 「ほう、その手があったか!」「やるもんだね!」と軽く受け取っておくのだが、いつしか躰のすみずみの血行に効いている---ヴィタミンEみたいなコーナーのつもりでやってきました。今回はVWステーション・ワゴンのDM(ダイレクト・メール)の中の2ページです。(『デザイン』誌1963年4月号に寄稿分のほんの一部)
VWのコピー・ポリシーは、セダンは経済性.空冷式リア・エンジンのよさ、少ないガソリン消費率、がっちりした設計、部品の交換がきき、サービスがよいこと---などです。ステーション・ワゴンとトラックは、加えて見た目よりもずっと荷物がたくさん積めること---などを強調している。またワゴンのデラックス型ではサン・ルーフ(天窓つき)を大きなセールス・トークに加えます。
そうした事実を新鮮な写貢と、ドキッとさせるようなヘッドとデザインで興味をひきつけるように表現するわけ。この表現方法は、DDBのお得意のテでもあります。DDBの広告哲学は「人々はあたりまえの広告は読もうとしない。広告は新鮮さ、オリジナリティ、想像性の三つをもたなければ絶対に読まれないのだ」しかも 「広告する製品の本質に触れよ。広告する製品の利点をわかりやすい簡潔な言葉でのべ、この利点をマザマザと明白に、おぼえやすく表わせ」というのです。 

Scouting---(ボーイ・スカウト活動)

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VWのDM

ここに招介したDMは年2回に分けて行われるDM キャンペーンの一部である。
ここではご覧にいれられないが、これらのキットの中にはDMキャンペーン・プログラムというタイトルのついたガイド兼注文票が入っている。それは4枚複写となっていて、2枚を米国VW社に、1枚をディストリビューターに送り、残りの1枚をディーラーが控えに持っておくような形式になっている。
DMキットは有料で、100セットあたりのディーラー負担金額が決まっている。20ドルから30ドルだから1セット20〜30セントという安さである。米国VW社のカムナ宣伝部長からの手紙では「ディーラーの住所・店名の刷込み費用にしかあたらない」値段だということだ。送料共であることはいうまでもない。
1店あたり「500セットぐらいの注文がある」とも教えてくれた。
1店のディーラーは1ヶ月に30台売り(1962年当時)、うちステーション・ワゴンとトラックの販売台数は10台弱と推定されるから、6ヶ月間に50台として効率は10%という高いものになる。
カタログ類はウルフスブルグ本社でつくって各ディーラーに配布しているから、DMを使わなくても、カタログだけでも結構商売できるハズ。