創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(227)『メリー・ウェルズ物語』(日本経済新聞社 1972年刊)(2)

第2章 積み木とジェット機--- 

プッチの助言

メリーは秘書のグレイスに、エミリオ・プッチを呼ぶように命じた。プッチは、イタリア貴族出のファッション・デザイナーである。
プッチが現われると、メリーは自分の考えを早口で話しはじめた。
「ねえ。機内でスチュワーデスにストリップをやらせるようなユニフォームはデザインできないかしら? もちろん、ほんとうにストリップをやらせるわけじゃなく、そんなふうに男性を思いこませるような---。だいたい、婦人部隊のようないまのユニフォームはなによ。女性が自由に着るものを選べる時代だっていうにのに---」
プッチがメリーの言葉をさえぎって言った。
「スチュワーデスの服を変えたとしてもメリー、それにふさわしい機内でなくっちゃあ、スチュワーデスだけが浮きあがってしまわないか?」
メリーは飛びあがらんばかりにしてプッチに言った。
「そうよ、そうよ。エミリオ。わかったわ。アレキサンダー・ジラルドに聞くきべきね」
ジラルドはハーマン・ミラー家具会社の椅子の布地の色とかカーテン地などの色調を決めている有名なテキスタイル・デザイナーである。
こんどはジラルドが呼ばれた。
ジラルドが言った。
「機内のことはまかしてもらっていいよ。しかしね、メリー。ユニフォームにしても機内のデザインにしても乗ってみるまで誰にもわからないことだ。もっとこう、ひと目でブラニフだってわかるようなアイデアはないだろうか。そのうえ空港の待合室から滑走路を眺めた時に、ああ、ブラニフが離陸したなって区別がつけられるような---」
再びメリーは考えこんでしまった。これまでで最大の難問にぶつかったのである。
振り出しに戻った。どの航空会社も、同じジェット機を買い、同じ飛行場から発着しているという---。

積み木とジェット機

その夜、メリーはぐったり疲れてイースト・サイドのアパートに帰りついた。
(ぼくは、ここ10年ばかりニューヨークはご無沙汰しているが、年に春秋2回ずつ取材に訪れていた1960年代、イースト・サイドのアパートといえば、玄関番のいる高級アパートを意味した。もちろん、地区にもよるが---)。
広いテラスがつき、各種の植木がおかれており、石とレンガとコンクリートと鉄でできたこの街とはおもえないような雰囲気をもったアパートだと、それなりに家賃は高い。メリーが住んでいたのはそういう高級アパートだった。
帰宅してみると、2人の養女---キャシーとパメラが積み木で遊んでいた。キャシーはポリネシア系の7歳になったばかりの少女。パメラは、インドネシア人と英国人の混血児で5歳だった。
メリーが見ている前でパメラが言った。
「キャシー。貸してあげた私の積み木を返して---」
するとキャシーはおとなしくピンクとグリーンの2個をパメラに返した。メリーが聞いた。
「キャシー。どうして借りてた積み木だとわかるの?」
「だって、ピンクとグリーンはパメラの色なんですもの---」
メリーはまさに、偉大なアイデアに到達した。
ヒントは、積み木であった。
ジェット機の胴体を1機1機、別々のパステル・カラーで塗り分ける---という民間航空プロモーション史上最大のアイデアの誕生である。

chuukyuu付記】空中ストリップの着想や積み木のエピソードは、すべて、chuukyuuの類推であることをお断りします。ただし、これからの数字は実記録です。


単調な飛行機にさようなら

そもそもアイデアとは、異質のものを組み合わせて新しい働きをつくることだといわれている。つまり、ジェット機と積み木を組み合わせがまさにそれである。
翌日から、メリーのオフィスは忙しくなった。多くの人びとが電話で呼びつけられたり、会議が続いたりしはじめた。タネが播かれたのである。
ブラニフ航空のジェット機の胴体は、七色に塗りわけられることが決まった。機内の座席も幾通りかの模様に変えることになった。
スチュワーデスの制服は飛行時間が長くなるにつれて、だんだん脱いでいくような形のアンサンブルにデザインされた。
機内食用のスプーンや食器、そしてコーヒー用の角砂糖の包み紙まで新しく七色にデザインされた。
合計で1万7543ヶ所も新しくなった。
この大改革キャンペーンは、メリーの最初の発想---機内でスチュワーデスがストリップを演じてビジネスで乗っているリピート男性客の目を楽しませるわけにはいかないか---という素朴な疑問が解決の糸口らになったので、「空中ストリップ」作戦と名づけられた。
「エア・ストリップ」とはもともとは「滑走路」という意味だが、それにうまくひっかけて、別の意味を持たせたのである。


続く >>


次の旅行地

ペルーには、すてきなレストランも美しい浜辺も、大きな美術館も、信じられないような日跡もあります。
けれど、もしペルーのパーティーをご存じないなら、ほんとうのペルーを見てきたことにはなりません。
きっとそこで、写真や絵葉書では見ることのできないきらびやかな服装をした人びと、彼らのゴシップをお知りなることでしょう。
たぷん、 リマで開かれるパーティーでの踊りは、世界中のどの町のものより激しいでしょう。
しかも、ここにはこういった場所が幾つもあるのです。
また、現地人と親しくなれる機会はいくらでもあります。
どこへ行ったらいいかは私どもがご案内いたしましょう。
私どもは、どの航空会社よりも多くの便をペルーに出しておりますから(イースタン航空と提携しているノン・ストップ便も含めて)あなたに旅行のご案内をしてさしあげられるのが、とてもうれしいのです。




The next place

There are fine restaurants in Peru, beautiful beaches in Peru, grand museums in Peru, abulous ruins in Peru.
But if you haven't been to a party in Peru. then you haven't really been to Peru.
Here you'll find the glitter and the gossip that they just don't print on picture post-cards.
There are probably more flings flung in Lima than in any other city in the world.
And a lot of elegant places to fling them in.
You11 find plenty of opportunities to mix with the natives.
Providing you know where to look.
Since we have more flights serving Peru than any other airline (including non-stops in cooperation with Eastern Airlines),
we'll be only too happy to give you directions.
For information,'write Braniff International, Exchange Park, Dallas,Texas 75235.
Or see your travel agent.

Braniff
International's
Peru.