創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(225)チャールズ・モス氏とのインタヴュー(3)

Mr. Charles Moss
Wells Rich Greene 社 副社長兼クリエイティブ・ディレクター(当時)


楽屋内をさらすと、このインタヴュー・シリーズを『ブレーン』誌に連載中、渡米しての取材は、コストの関係で1度に6〜8人をこなしました。だから、テープ起こしをした英文をご当人へ送ってチェックを頼むのに、人によっては数ヶ月遅くなることもありました。モス氏が、原文から、きょうのこの項目を消したのは、推理すると、その後、もっと気に入ったTV-CMをつくったが、フィルム(当時)の同封と文章の新規書き込みがめんどうなので、「えい、削っちまえ」ということだったのかも。つまり、英文が見当たらないのです。もう一つ、お断り。ジャベリンの「小僧っ子たち」のフィルム、誰かに貸したまま返されてこなかったのか、手元にありませんので、コマ割りで。

お気に入りのコマーシャルは「老婦人」と「小僧っ子」


chuukyuu 「いままでにあなたがおつくりになった広告で、最も気に入っているのをを2点あげて、その広告をつくった時のエピソードを話してください」


モス 「私の好きな広告の1つは、ブラニフ航空の『老婦人』のコマーシャルです。老婦人が飛行機を盗むやつで、あのコマーシャルが気に入っている理由の1つは、あれが人びとの間で話題になったし、どのライターも好きな広告だからだと思います。
でも、あのコマーシャルに関して、これというエピソードは思い出せません。あの役をやってもらったおばあさんが、飛行機を引っぱるトラクターを運転することを頑として承知しなかったということぐらいですです。ですから私たちは、空港で作業員をかつらやスカートでドレス・アップさせて、 トラクターに乗せ、飛行機を引っばらせなければなりませんでした(笑)。

ブラニフ・インターナショナル航空 [老婦人]】


愛すべき老婦人がキャンディ、フォーク、毛布など、たくさんのものを盗むので、隣席の老紳士はあきれ顔。彼女が飛行機を降りる時、荷物が多くなりすぎたので、スチュワーデスが「お手伝いしましょうか」と声をかける。老婦人はついにジーブで飛行機をも盗む。
(スチュワーデスの機内アナウンス)「みなさま。ブラニフ航空外国航路にご搭乗くださいましてありがとうとございます。到着時刻は、東部標準時---。


(アナウンサー)昨年、ブラニフ航空は、完全に定期航空便の再計画をたてまた。そして、お気にいっていただけるかどうか心配しました。今では、私どもも気に入ってくだきる方が少し多すぎるのではないかと思っています。この計画をやめないかぎり、私どもは、みなさまの記念品あさりに反対できません。


 →動画はこちら


もう一つのコマーシャルは、私たちが『小僧っ子たち』と呼んでいるものです。
これは、不良少年の一団が、なぜこの車を盗みたいかを話し合っているものです。思い出せるたった一つのエピソードは、そのコマーシャルをつくるのに、ほんとうに短い時間しかなかったということ。あのコマーシャルは、大平洋岸で撮りました。二ューヨーク発正午の飛行機に乗り、カリフォルニアに現地時間で3時着。夕方の6時にキャストを決め、9時にリハーサル、11時には飛行機に乗って帰路についていました。

アメリカン・モーターズ ジャベリン [小僧っ子たち]】

ジャベリンの囲りに集まったチンピラ若者たち「このジャペリンって奴は、いちばん安いスポーツカーだってことを、テディー、知ってるか? こういうのもなんだが、俺様がジャベリン通だってことは、みんなも知ってるよな---バンバーがすげえ。三角窓をとっ払って、けっこうな見通し」「ポンネットの中は?」「ゆとり十分のシート。俺たちが待ってた車ってわけさ」


>>続く


chuukyuuつぶやき
じつは、アメリカン・モーターズのCMでは、オン・エア時、賛否両論がまきおこった『ムスタングに似た車を爆破』するのがあげられるかとおもった。
すなわち、数人の男たちが、ムスタング(に似せてつくった)車を引きだしてきて、「もし、スポーティカーをこんなアイデアでつくつたら---。バンパーをもっと重厚にし、ノーベントのウィンドウをもっと広くし、バケット・シートをもつと贅沢にし、オール・シンクロメッシュの変速機にし、木目調のハンドルにしたら」とつぎつぎにその部扮をハンマーで壊したりナイフで裂いたりしながら「フットルームとヘッドルームをもっとひろげ、バックシートをひろくし、トランクも大きくしたら---みんなが買うとお考えになりますか?」と、ダイナマイトでムスタングを爆破---白煙の中からアメリカン・モーターズのスポーティカー---ジャベリンが現われるという、人をくったコマーシャル。
これで、一気に、ジャベリンの名は米国民に覚えられたし、車も売れたが、ムスタング側からは猛烈な抗議があって、オン・エアは長くは続かなかった。


代わりに、雑誌広告を---。


ムスタングとジャベリンの不公平な比較。


私たちは、同じ条件のもとで両車の写真を撮ってほしいと、プロの写真家に頼みました。
結果は、ムスタングが割を食うことになってしまいました。
私たちのジャベリンはしっかりした輪郭のバンパーを備えています。
ムスタングに不利だというのは、薄くて扁平なバンパーは写真映りがよくないからです。
私たちのジャベリンは高価なガラスを使っており、三角窓なんかでサイド・ビューを損なってはいません。
不公平だと断ったのは、ムスタングはそうではないからです。
私たちのジャベリンはムスタングよりもはるかに豊かで洗練された外観をしています。ルーフの継ぎ目は手やすりで仕上げられています。
ムスタングのほうは、機械仕上げで安上がりにつくられているというと、公平さを欠きますかな。
ジャベリンのスタンダードの6気筒エンジンは、ムスタングよりも排気量が大きく馬力も大きいし、スタンダードV−8のほうも、排気量はムスタングよりもずっと大きくなっています。
公平ではありませんね。
ジャベリンのフットルーム、ヘッドルームともにずっと広く、バックシートも5インチも広いのです。
不公平ですね。
私たちのジャベリンは、ムスタングよりも大きなガソリン・タンクとトランクルームを備え、強力なバッテリーを搭載しています。
不公平ですね。
私たちのジャベリンは、精巧な(フロー・スルー方式の)ベンチレーション機構、ホィール・ディスク、リクライニング式のバケットシート、木目のハンドルを備えています。
とりわけ不公平なのは、私たちのジャベリンの登録台数は、ムスタングほど多くはないって点です。
以上の比較は、新車の発表がこの広告の締切に間合わなかったために1968年型ジャベリンSSTと1967年型ムスタングハードトップとの間でやりました。
実際、1968年型ムスタングを入手しようと試みてはみたのですよ」




An unfair comparison between the Mustang and the Javelin.


We asked a professional photographer to take a picture of both cars under identical conditions.
Thereby putting the Mustang at a disadvantage.
Our Javelin is equipped with massive contour bumpers.
Unfair to Mustang, because thin blade bumpers don't photograph as well.
Our Javelin is endowed with yards of costly glass. Side windows are all one piece, without vents to break up the line.
Unfair, becaise Mustang isn't neary so generous.
Our Javelin has a ri\cher, more polished lool. Roof joints are hand-finished.
Unfair. because itiis cheaper to make roof joints by madhine.
Our Javejlin has bigger displacement and more horsepower in its standard 6-cylinder engine, bigger displacement in its standard V-8.
Unfair.
Our Javelin has more leg room, morehead room, the backetseat is a good 5 inches wider.
Unfair.
Our Javelin has a bigger gas tank, a roomer trunk, a more powerful battery.
Unfair.
Our Javelin comes with a sophisticated (flow-through) ventilation system, wheel discs, reclining bucket seats and a woodgrain steering wheel.
And, unfairest of all, our Javelin lists for no more than the Mustang.
The preceding comparison was made between a 1968 Javelin SST and 1967 Mustang Hardtop, only because this year's model was not availsable from the manufacturer in time for this printing. We really tried to get one.


>>続く