創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(181)大もの---ジョージ・ロイス氏(13)

Great art director Mr.George Lois


これから、数日にわたって、パパート・ケーニグ・ロイス(PKL)社を創業した当時のロイス氏のエッセイを紹介します。
『アート・ディレクション』誌1963年8月号でロイス氏が指摘した、広告業界才能資源時間の壮大なる無駄づかいは、半世紀後のいま、改善されているのだろうか?

「ぼくは、コンプスに信を置かない」


ぼくは、コンプリヘンシブ(プレゼンテーションのために、パステルや水彩で色をつけたり写真を貼りつけて原稿)を決して使わない。元来、私たちの時間や労力は、クライアントの商品を売るための広告アイデアを練るのに費やされるべきものである。コンプスなどというものは、時間し労力を浪費させるにすぎないからだ。
コンプスをつくること自体におカネがかかるが、それとてクライアントのカネである注:米国では、プレゼンテーションの費用は、発注者が負担するのが原則)
ある一つの広告なりキャンペーンなりのアイデアをもっとラフな段階で検討し、それを完成原稿にもっていくのは、代理店の専門家としての腕を信じることが、クライアントの仕事であろう。そこまでは信じられん、というのなら、代理店を変えるより仕方があるまい。
ぼくがコンプスをつくろうと思わない主たる理由は、ほくそれをしないほうが好きだからである。ぼくは自分の時間をいろいろたくさんのラフ・アイデアを考えることに費やす。考えのうちの一つがいいとなると、それをクライアントに売る。
ぼくは、自分がOKとなれば、ぼくにできる最もうまい方法で完成品し仕上げる。これがぼくの仕事のすすめ方である。

ここにお見せするのは、ひとつのオリジナル・ラフ(ぼくは、この形でクライアントにこの原稿を売った)と、その完成原稿である。


ご覧ください。口紅がすべて同じだということはありません。これはファベルジェのステンド・グラス口紅です。

 See. All lipsticks are not alike. This one is Stained Glass by Fabege.


>>continue