創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(60)VWビートルの広告(33)

1960年といえば、47年前ですね。そのころ、ぼくはコピー・チーフとして、ト○タ車の広告やパンフレットの文章を取り仕切っいました。いま、こうしてVWのものを改めて見渡して、(こんなふうに、誰にでも理解できるように、やさしくは書いてなかった)ことを反省しています。ぼくが書いたのは「4輪独立懸架方式なので、衝撃を吸収します」
VWはこうです。「全輪にトーションバー・サスペンションを採用しています。ひどい荒地でも腹をうつことがありません」
機構そのものは、いまではあたり前のものですが、要は読み手にどう伝えるかなんです。相手が理解できるように伝えてこそ、コミュニケーションですものね。


なぜ、車輪が曲がっているのでしょう?

左右独立した後車軸。
後車輪は、それぞれ、路面状況に合わせてぴったりとそいます。
(ヨーロッパのほとんどのレーシングカーが、こうなっていますが、乗用車では珍しいのです)。
反対に、固い後車軸ならどうでしょうか?
もし、あなたの車が穴ぼこに落ちたら?
ゴツン。
慣れたドライバーは、このゴツンとくるまで待ちます。
フォルクスワーゲンは、そうはなりません。
「3年間も乗りまわしているが、私のフォルクスがゴツンと揺れたことなんて、いまだにない」と、あるユーザーはおっしゃいます。
フォルクスワーゲンは、全輪にトーションバー・サスペンション式を採用しています。
(これのついている車は、そうありません)
在来のスプリングだと「腰をうつ」ことがあります。VWのトーション・スプリングはねじれるのです。ねじれの度合いが強いほど、効きめがいいのです。このため車は揺れるだけ。ひどい荒地でも、足もとのしっかりした運転ができるわけです。
曲がった車輪?
だからこそフォルクスワーゲンが水平に走れるのです。




Why are the wheels crooked?

A split rear axle.
The rear wheels are individually suspended, to adjust to the shape of the road.
(Most European racers have this, but few passenger cars.)
Take the opposite: the rigid rear axle. What if your car hits a rut hole?
Clunk.
Seasoned drivers wait for this thump.
In a Volkswagen, it never comes.
"I've been tooling around in my Volks for 3 years," says one commuter, "and I'm still surprised when the jolt doesn't come."
Volkswagens also have torsion bar suspension
on all four wheels. (Not many passenger cars have this, either.)
Ordinary springs can "hit bottom." VW torsion springs twist. The more they twist, the more spring they develop. This cradles the car. You get a sure-footed ride over rough terrain.
Crooked wheels?
That's what keeps the Volkswagen on the level.