創造と環境

コピーライター西尾忠久の1960年代を中心としたアメリカ広告のアーカイブ

(161) ロール・パーカー夫人とのインタヴュー(了)

ドイル・デーン・バーンバック社 副社長兼コピースーパバイザー


ロール・パーカー夫人とのインタヴュー(1)(2)(3)(4)(5)(6)

海外旅行で得たものとコピーライティング


パーカー夫妻を案内して山中湖へドライブしている時でした。夫妻は、帰路に香港に寄るか、そのまま帰国するかを議論していました。パーカー夫人がぼくに言いました。「ねえ、chuukyuu、香港へ寄れば、私たちは世界の50ヶ国を旅行したことになるの。50番目の国として、香港は寄るにふさわしいと思う?」
50番目の国に、香港でなりませんでした。日本から帰って半年もしないうちに、メキシコ旅行をしたという手紙を受けとりましたから、メキシコが50番目の国になったのかもしれません。


chuukyuu「旅行は、コピーライターにとって、どんなプラスを与えてくれますか?」
パーカー夫人「たしかに私は、あちこち旅行しています。DDBのクリエイティブ部門の人たちの中では、多分、純粋な喜びを得るために最も多く旅行しているでしょうね。
でも、外国旅行がコピーライターにとって有意義であるかということになると、必ずしも「イエス」とは言えませんね。勘のいい人であれば、外国へ出なくっても、自分の家の近所でも、かなりのインスピレーションを得ることができます。
私がヒマラヤ山脈や、アマゾン川で得たようなインスピレーションを、地元で見つけだす人だっていましたよ。
私は思うんですけれど、あんまり外国旅行をすることは、時によっては大きな危険を伴うこともあります。というのは、外国でエキゾチックなものに印象づけられてくるんですが、そのほとんどは自分がコピーによって大衆へ話しかけるのには、なんの関係もないものです。また外国で見たエキゾチックなセッティングでものを考えてみても---事実、エキゾチックなものを使ってみたい誘惑にもかられますが、ほとんど関係ないし、危険ですね。
つまり、広く外国旅行をすると、自分が話しかけなければならない地元の大衆から離れてしまうこともありますから、これを警戒しなければいけないということです。
行った先で感赦しちゃって、なんですてきなところなんてしょう! ここでコマーシャルを撮ったら、きっとすごいのができるわよ」なんてことも言いだしかねませんものね。
そして、私たちが広告を通して話しかけなければならない人びとがこういう場所の芙しく素朴な人びとであるかのように錯覚してしまうんです。
実際には、ブルックリンに住む家庭の主婦であるはずなのに。ですから時に旅行は不必要ななものにもなるのてす。典型的な米国の消費者からライターを引き離してしまうこともありますから。
私の場合、海外旅行はホビー---楽しみとして、私の人間的なものを幅広くしてくれました。一種の教育ですね。人間性の涵養とでもいいますか、こういう見地からは、とてもプラスになっています。
ですから、人によっては、海外康行をしなくっても、魚釣りとかボーリングをやることで人間の幅を広げる人もありましょうね。
問題は、何が楽しみの対象であるかということではなくって、あることに対して興味をもつということが大切なんじゃないかしら。私の場合には、たまたまそれが、外国旅行だったのね」


(了)