創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(159) ロール・パーカー夫人とのインタヴュー(4)

ドイル・デーン・バーンバック社 副社長兼コピースーパバイザー

ロール・パーカー夫人とのインタヴュー(1)(2)(3)

不利に見えるものをプラスに変える、よき伝統(つづき)


パーカー夫人「もう一つもコマーシャルで---シリーズになったコマーシャルといったほうが正確です---- アートディレクターのレン・シローイッツと組んでんで作ったパックウインズ・ハンド・ローションのものです。
これは、本来はあるものを真似て作られたハンド・ローションで、その種の商品では、大きなジャージン・ローションが市漁の優位を占めていました。
しかもこういったものは鋭明しなければならない違いなどないのです。そこで私たちは、風変わりなやり方でもってパックウィンズウインズ・ローションをユニークなものにしようと決めました。
一見変わった話をする婦人---- 話す手---を考え出しました。どうしたら人間の手が話をしているように見せられるか色々と研究していた幼い日のことを思い出したりしました。そして、この思い出に手を加えたのです。手に人目を引く顔を描き、世界一セタシーな声の持主である歌手で女優のアーサー・キットに声援を引き受けてもらうことにして、こうして出来上がったトーキング・ハンドを、手あれの原因になると思われる状態に置いていったのです。
たとえば、食器を洗ったあとの洗剤の中とか、寒い北風の中とか、光り輝く太陽のもと浜辺で海水につけてみるとかといった具合いに。こういう状態の中で、キットは、バックウインズ・ハンド・ローションをかけなかったらこんな経験の中で手はひどく荒れてしまったでしょう、と語りかけるのです。
そして、これがハッピー・エンドになるように、彼女はロマンチックな落ちをつけるのです---- 男性の手が情熱的にトーキング・ハンドを抱きしめるシーンで、とてもエロチックなシーンなので、もし、これが手だけのものでなくて2人の男女が登場するものだとしたら検閲官はきっとこれを差しおさえることになると思います。
このコマーシャルは技術的にとてもむずかしいものでした。それぞれのコマーシャル撮影のたびにモデルの手にレンは1時間もかけて顔を描いたのです。
アーサー・キットの声は前もって録音しでおいたのですが、モデルが彼女の声に合わせて手を動かす練習に何日もついやしました。
また、私たちは、 トーキング・ハンドがパックウィンズのセールスマンと話をしながらとてもすてきにたばこをふかすというセールス・フィルムも考えました。でも、これはコマーシャルにはしなかったんです。なぜって、たばこを吸っているコマーシャルを流すことを、いかに強くバーンバックさんが反対するか、知っているからなのです。DDBがたばこのアカウントは引き受けないってことはご存じでしたね?
このシリーズは、聴衆の心の中にまで設透し、広く人びとに知られるようになりました。もっとも、このコマーシャルに熱中してくれたのは子どもたちだったかも知れませんが、少なくとも、私たちが望んだ消費者ではなかったようす。でも、こういう子どもたちはかならずお母さんの誕生日とかクリスマス・プレゼントに買うにきまってますよ」


>>つづく

パックウィンズ・ハンド・ローションのTV-CM 『話す手』シリーズの1


アーサー・キットの声「あなたは古くからあるすてきなハンド・ローション、知ってて? そう、1910年に発明されたのよ。その頃には洗剤なんかなかったわね。いまじゃ、洗剤で手が荒れる---そこで、生まれたのがこれ---パックウインズのドライスキン用の新ローションよ。洗剤荒れの手の救世主。肌をやわらげ、潤いを与える濃縮液なの。それにこんなに美しい容器に入ってわ」とキスする手に書かれた顔。


>>つづく