創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(99)いわゆる「DDBルック」を語る(9)

 前DDBクリエイティブ・マネジメント・スーパバイザー
 ポーラ・グリーン
 (1969年退社 グリーン・ドロマッチ社をDDBの隣のビルに設立)


『MC』誌1969年6月号の記事、ご当人の了解をとって拙編DDBドキュメント』 (誠文堂新光社 ブレーンブックス 1970.11.10)に翻訳・掲載したものです。


<<いわゆる「DDBルック」を語る(1)

締切もアイデアを呼ぶ


問い「緊急事態の時のほうがよく仕事ができますか?」


グリーン「さあ、どうでしょうか、時によりけりですね。ある種の緊急事態とか、それがすぐ必要な場合とかにならないと、アイデアはなかなか固まらないと思います。時に固まる場合もありますけれど。
ボブ・ゲイジ(DDBのクリエイティブ部門の総責任者でアートディレクター)氏がいつかのスピーチでいってましたが、あの人は完全に強いられ、追いつめられないと何もできないと。
つまり、頭の奥でぐつぐついっているアイデアを引っばり出すには、かなり強制(一種の触媒)が必要だということなんでしょうね。本当に締切の力を借りなければだめなんだわ」


問い「あなたが特に嫌だと思っていることがありますか?」


グリーン「ええ、自分を意識しすぎた書き方が大嫌いです。『ネ、見てください、わたし、すごいでしょう?』なんていっているような書き方が嫌いです。
分かりにくいほど、あまりもに複雑な書き方もきらいです。それだと、この仕事をしていることにならないと思うからです。そういう意味では、非能率も嫌いです。
浅薄さ、愚鈍も嫌いです。でもコピーの場合には、そんなのはあるかどうかわかりませんけど。
とにかく、ひけらかしているコピーは嫌いです」


問い「コピーを書く場合、特に注意していることはありますか?」


グリーンコピーは、鮮明、簡潔、そしてだれかに読ませ、理解させる能力などを備えていなければならないと思います。だれにも読んでもらえなく、理解してもらえないなら、ボディー・コピーをギリシャ語で書けばいいんだわ。
読んでくれる人が少なくったっていいんです。でも、ちゃんと理解してもらえれば。
ついつい、多くの人に読んでほしいと思うから、万人向きの漠然とした書き方をしてしまうのです。万人向きってことは、誰一人として読まないってことです。
わたしは、たった一人しか読んでくれなくったってかまわないから、最高にシンプルで、鮮明で、感嘆を呼ぶ言葉を使ったコピーでなくては嫌です」


問い「何年も経てきている間に、ご自分の仕事の質に何か変化---つまり改善ですが---があったと思いますか?」


グリーン「わたしのコピーは、年々少しずつよくなってきていると思います。より鮮明で、よりよい、より説得力のあるものになってきています。そしてよりシンプルに。
その意味では改善というのはわたしの好きなことですわ。
イデアもより鮮明に、より信頼性があるように表現できるようになりました」


問い「クリエイティブ・マネジメント・スーパバイザーとして、ほかのライターをどういうふうに扱っていらっしゃいますか?」


グリーン「うまくなるようにです。共感と理解、そして誠実さをもって扱ってるつもりです」


>>(10)に続く


【広告戦争】
1位のハーツは、エイビスのフォーマットを模した広告をつくり、エイビスを名指しで攻撃に移ってきた。(注:エイビスは一度もハーツを名指してはいない。1位とか業界最大手とほのめかしはしてきたが---)。



あはッ!
エイビスの強がり広告を
期待してましたね。


この4年間というもの、われわれはいささかイラつかされてましたよ。
あれこれ、あてこすりをいわれましたからね。
事実じゃないことばっかり。
われわれは、サービスを万全なように、システムを再構成しています---云々(以下略)。


エイビスは切り返えした。



エイビスは、より大きな軍団に
攻撃されています。


私たちの強敵手の一つは、「エイビスの強がり広告もどき」というのを連載しています。やりたいなら、やらせておきましょう。
でも、これだけはいっておかなくちゃぁ。向こうの大きさ、そして、エイビスが可愛らしいほど小さいって印象づけていることを。
最近、先方さん、あんまりかっこつけてられないみたい。
私たちが差をどんどん縮めてますからね。
先方さんの軍団は、トラック込みで104,000台。こちらは7万1,000台。
この数字についてつけ加えますと、プリムスのすてきな新車はまだ加えていません。
No.1は、私たちがどこまで追いあげてきているかを知ってるはずです。
私たちはがかつての小軍団のままだとたら、あんな広告を連載するはずがありませんもの。


さらに・・・。


エイビスは、あなたが必要です。
あなたは、エイビスが必要じゃない。
エイビスは、このことを肝に銘じています。


私たちは、なお、少しばかり、空腹です。
業界で2位にしかすぎないのです。
お客さまを十把ひとからげなんかにはできません。
まあ、ビジネスがうまくいってると、つい、お客をはしょったり、粗略にあつかうことも、なきにしもあらず、です。
そんなとき、カウンターに近づいて行って、めんどくさがられたいなんて思いませんよね。
試めしてください。
エイビスのカウンターへいらっしゃって、生きのいいスーパー・トルクのフォードの新車を借りてみてください。エイビスは業界で2位なんです。だから、お客さまをお客さまとして遇するようにしっかりやってます。
カウンターには2つの側があります。
もちろん、どっち側が私たちのパンにバターを塗ってくださるのか、分かってます。
                  (訳:金丸 哲&chyuukyuu)    


これまでにアーカイブしたエイビス・キャンペーン

[DDBの広告]エイビス(01) (02) (03) (04) (05) (06) (07)



>>(10)に続く