創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(69)『かぶと虫の図版100選』テキスト(14)


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1970年3月20日フォルクスワーゲン・ビートルに関する2冊目の編著書の新書版『かぶと虫の図版100選』をブレーン・ブックスから上梓しました。そのテキスト部分の転載です。

多色刷り広告は11年間にわずか15点だけ

VWビートルの広告キャンペーンのほとんどが、印刷媒体の場合には、1ページ・モノクロである。
2分の1ページよりも1ページであることで、VWという企業がすでに確固たるものであることを暗示し、モノクロ中心であることにによって、誠実、質素、機能的---といったイメージづけを予期している。(注:37年前の段階での評価。テレビ映像もカラー化し、インターネットもカラー画像の時代、モノクロはかえって時代遅れの印象をもたれかねない)。

この点について、ロバート・ファイン副社長はこう説明した。
問い「かぶと虫の広告は、だいたい単色でいってますね。ところが、同じVWでも、ステーション・ワゴンはほとんどが多色刷りになっている理由は?」
ファイン「かぶと虫のほうは〔シンプル〕が売り込みのポイントです。ですから、ずーっとクラシックな形で、3分の2を写真に使い、3分の1をにコピーを置く。そして、モノクロページしか使わない。誠実と簡潔というのがこの車の特長ですから、私たちの広告表現にも、それをとりいれているのです。
スターション・ワゴンは、多色刷りのほうがよく見える。この車は、普通のワゴンよりも、ちょっと変わっているんです。今まで世間にあるものとは違うんだ、というファニーさで売っているわけです。ですから、多色刷りページを使う。
ですが、テレビ・コマーシャルでは、どちらもカラーでやっていますよ。全米で、カラー受像機が2,500万台普及していますから---」(注:37年前のインタヴュー)。

これでもカラー広告↓。


昔のようにはつくっていません。

外見は昔と同じです。だからといって、同じようにつくっているわけではありません。
リア・ウィンドウは、以前か小さかったものです。
いまは視界が広くなりました。
リア・シートは、古い型の簡単なやつでした。
今のは折りたたみ式です。
馬力もこれまでに76%アップされました。
デュアル・ブレーキ方式がとられました。
ヒーターも、うんと改良されました。
これまでに、2,200ヶ所も改良されてきたのです。それでも、相当のクルマおたくでなければ、古い型と新しい型の区別がつきません。
もちろん、それこそ私たちのねらいだったのです。
1949年、他の大きな車がより大きくなり、奇想天外なモデル・チェンジをして、カイザーとかハドソン,ナッシュなどの名前をつけていたころ、私たちは、このかぶと虫を決して流行遅れのものにしないようにしようと誓ったのでした。
私たちが正しいとか、彼らが間違っているとかいうのではなく、ただ一つ確かなことがあります。彼らとて、昔のようにはつくっていないということです。




They don't make them like they used to.

They may still look Iike they used to, but that doesn't mean we still make them that way.
We used to have a tiny rear window.
Now there'sabig one.
We used to have a plain old rear seat.
Now there's one that folds down.
Over the years, engine power has been increased by 76%.
A dual brake system has been added.
The heater is much improved.
Fact is, over the years, over 2,200 such improvements have been made. Yet, you have to be some sort of a car nut to tell a new one from an old one.
Which, of course, was the plan.
In 1949, when we decided not to out-date the bug, some of the big auto names making big, fancy changes were Kaiser, Hudson and Nash.
Not that we were right and theywere wrong, but one thing's for sure: They don't make them like they used to either.


私たちは、ファニーな格好の車もつくります。

私たちは、かぶと虫のような車もつくります。
バスのようなステーション・ワゴンも----(みながそういってます)。
しかし、それについて、ちょっとちがったうに考えています。二つのフォルクスワーゲンは、そうあるべき格好をしているのだと---。
VWセダンは、4人乗りです。ステーション・ワゴンは、定員8人とバックや手荷物を運ぶようにできています(本物のバスに乗ったときと同じぐらいのヘッド・ルームとレッグ・ルームもあります)。
ワゴンはまた、驚くほど多くのものが積めるようになっています(在来のワゴンの105立方フィートに比較して、170立方フィートの容積があります)。
フォルクスワーゲンは、どちらかも空冷式エンジンです。冷却水も不凍液も不要です。氷上や雪道でもすばらしい牽引力を発揮します。
どちらも駐車スペースは同じです(ワゴンが9インチ長いだけです)。
両車とも、はやりすたりを無視しています。あなたが運転しているVWが何年型か、誰にもわかりません。あなた以外には---。
私たちのセダンは、かなり見慣れられました。もう、見ても笑う人はそういません。しかし、ステーション・ワゴンの方はまだ、いくらか笑いの種を提供しています。




We also make a funny-looking car.

We make a car that looks like a beetle.
And a station wagon that looks like a bus. (Or so we're told.)
But we think of them a litte differently; both Volkswagen look just like what they are,
The VW Sedan is for carrying 4 people. The station wagon is for 8, bag and baggage.(With almost as much headroom and legroom as you get in real bus.)
The wagon also handles a staggering amount of just stuff. (It has 10 cuboic feet of space, compared to about 105 in conventional wagons.)
Both Volkswagens have air-cooled rear engine. No water or anti-freeze needed; terrific traction on ice and snow.
Both park in practically the same space space. (The wagon is only 9 inchs longer.)
Both defy obsolescence. Nobody knows what year VW you drive. Except you.
Our sedan is a pretly familiar sight; not many people laugh at it any more. But our station wagon is still good for a few chuckles.


>>(15)に続く。