創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(30)VWビートルの広告(2)

VWビートルは、1949年に米国で2台売れた。
1959年、ドイツからVW米国社へ責任者として派遣されたカール・ハン氏は、広告キャンペーンをDDBにまかせた。
DDBVWビートルに人格を与えた。
その結果…米国でのVWビートルの売り上げは、


1958年   78,588台
1959年  119,899台
1960年  159,995台
1961年  177,348台
1962年  192,570台
1963年  240,143台
1964年  307,173台
1965年  350,000台(予定)


【訳文】
改良至難な形だってあるんです
雌鳥にきくまでもありませんよ。
タマゴ以上に機能的な形をデザインすることはできません。
そこで、私たちも、フォルクスワーゲン・セダンを、そっくりタマゴに似せてつくったのです。
でも、私たちがそれで満足しているなんて、思わないでください。
(実際の話、フォルクスワーゲンは、3,000回近くも変えられているのです)
ところが、さすがに、その基本的デザインを変えることはできませんでした。
タマゴのように、それは、中身に対する、完璧なパッケージであるからです。
そこで、私たちは、努力を内部に注ぎました。
ガソリンの消費はそのままで馬力を上げること、ロー・ギアをシンクロメッシーュにすること、ヒーターを改良することなどです。
その結果、私たちのパッケージは、おとな4人とその荷物を運ぶのに、普通のガソリン1リットルで13km走り、タイヤは64,000kmも保つようになりました。
もちろん、外観も少し変えました。
たとえば、プッシュボタン式のドア把手がそうです。
タマゴ以上といえますね?


Some shapes are hard to improve on.

Ask any hen.
you just can't design a more functional shape for on egg.
And we figure the same is true of the Volkswagen Sedan.
Don't think we haven't tried.
(As a matter of fact, the Volkswagen's been changed nearly 3,000 times.)
But we can't improve our basic design.
Like the egg, it's the right kind of package for what goes inside.
So that's where most of our energy goes.
To get more poewer without using more gas. To put synchromesh on first gear.
To improve the heater. That kind of thing.
As a result, our package carries four adults, and their luggage, at about 32 miles to a gallon of regulor gas and 40,000 miles to a set of tires.
Wa've made a few external chager, of course. Such as push-button doornobs.
Which is one up on the egg?

クリエイティビティの要諦の一つに、<ほかのものに置きかえてみる>というのがあります。
いえ、タマゴに置き換えたことをいっているのではありません。
DDBのクリエイターたちが、機会あるごとに目標にしていた広告があるのです。
いつかも書きましたが、実物大のイチゴを1個、ぽつんと置き、「これを切り刻むなんて可哀そう」と書いた広告で、バーンバックさんのアイデアでした。

長いあいだ、その伝説の広告を夢想してきました。

ところが、友人のtempoさんがくださった本にそれがあったのです! 
『ヘルムート・クローン クリエイティブの革命』

新聞の縦1/2を使った色刷りのフェアモント・イチゴでした。
コピーライターはローリ・パーカー夫人、アートディレクターはバート・スタインハウザー氏とあり、バーンバックさんの名前を伏せていました。

VWビートルの有名な作品の一つ---”Think small" も、イチゴのヴァリエーションといえばいえます。(>>ヘルムート・クローン インタヴュー
そして、VWビートルの多くの広告は、車に置き換えた、ぽつんのイチゴを、拡大したものともいえますね。



もっとVWビートルにお会いになるには、

Advertisements of VW

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