創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(47)DDBのやり方を語る(了)「DDBのクライアント(承前)」

DDBアカウント担当重役 ネッド・ドイル(注:1969年に引退)        
Mr.Ned Doyle


これは、『DDBニュース』1969年7月号に載ったインタヴューを、ご本人の許可を得て、拙編『DDBドキュメント』(ブレーン・ブックス 1970.11.10)に翻訳・転載したものです。


DDBのやり方を語る(1) (2) (3)

DDBのクライアント(承前)

問いDDBは確かに、VWビ−トルとかポラロイドといったユニークな商品の広告にかけてはたいしたものだが、はたしてパッケージ商品を売ることができるだろうか、と長年いわれてきました。
パッケージ商品を売るには、確かにすぐれた広告以上のものが要求されますが、その点、DDBのかの機能について話してくださいませんか?」
ドイル「もちろん、個性をほとんど持っていないパッケージ商品もあります。だから本当にこれは大変なことなのですが、たとえばフェイスII石けんにしてもいうべきことはあったのです。これはクリームとデオドランド石けんが一緒になった初めての製品でした。そして成功しました。
(注;フェイスII石けんの成功については、ロバート・レブンソン氏のインタヴュー(2)を参照)
クラッカー・ジャックも広告として成功したものです。広告が出た時にはいつも売れ行きがのびました。
(注:パーティではじかせるクラッカーの形状をしたスナックの〔クラッカー・ジャック〕。コメディアン某(芸名失念)がクラッカージャックを口に入れようとする瞬間に何かがおきて入らないので、とぼけた表情になる、子ども向けのコマーシャルの連作。一例をあげると、無重力の宇宙船の中なので、クラッカー・ジャックは宙に浮いてしまう。
別の子ども向けスナック---ローラ・スカダ・ポテト・チップスをお目にかける。商品コンセプトは「世界中でもっともノイジーな(音がやかましい)ポテト・チップス」。子どもが大きな音を立てて食べる、その音の大きさで乾燥した口あたりを代弁。媒体は子どもたちが見ている時間のモノクロのコマーシャル)。


つっかえ、つっかえ、宣誓。

玄関でローラ・スケートしません。


ものを壊しません。


猫に犬をけしかけません。


道路でバスケット・ボールしません。


スープをぴちゃぴちゃやりません。


でも、
これだけは喜んでやります。
世界一やかまし
ローラ・スカダ・ポテト・チップスは、
音をさせます。


ハインツのケチャップもおそろしく成功しました。

(注:雑誌広告の1例。

注いでから、ほかのケチャップからは3分39秒で水がでました。
これも、ハインツがちょつと高い理由の一つ。


母親向けの上の雑誌広告のほかに、子ども向きのテレビ・コマーシャルで、西部の酒場でケチャップ・ガン・マンが遅撃ち競争で、ほかのケチャップが早く流れ出て倒れるのもある。コンセプトは「西部でも、東部でも、南部でも、もっともノロマなケチャップ」 ノロマを味の濃密に置き換えた)。

子どもはケチャップが大好き。子どもたちによる指名買いも多いとおもう。
決闘


YouTube

(アナウンス)西部でも、東部でも、南部でも、北部でも、最ものろまなケチャップです。

バーンバックと私は、われわれのクライアントにわれわれが作った広告ばかりを集めたブラック・ブックを持って行きました。見込みクライアントに、いわばわれわれの歴史をプレゼンテーションするためでした。バ−ンバックがDDBの哲学に説明をつけ、オーバックスから始まって、われわれの創造力がいかに高いかを示した広告がたくさん収められていました。
ジョー・ダリー(この時点からのちに社長)が新規ビジネス担当になってからは、このブックはわれわれのパッケージ商品における成功を強調したものに変えられました。われわれが扱っているバッケージ商品と業績をあげた非常に印象的なプレゼンテーションです。
DDBは、クリエイティブな存在で知られており、これは絶対に変えたくないことです。われわれは広告主に、DDBへ行けば最高のクリエイティブな仕事をしてもらえるというふうに感じてほしいのです。
しかし、マーケティングでもリサーチでも、メディア・バイイングでも同様の仕事をしてもらえるのだということも知ってほしいのです。それが広告主のためにパッケージされているのだと。広告主は偉大なクリエイティブ・ワークを望みますが、ほかのサービスも絶対に欠かせないのです。
ペトカペイジ(メディア部長)は、私たちの最大のクライアントたちから、彼らのどの代理店のメディア部門よりもすぐれた仕事をしているとほめられていますし、マーケティング部のアトラス部長も最高の仕事をしています。そして、なんら証明することのできないコピーテストのようなものからDDBを守るためにDDBを守るために、アラン・グリーンバーグ調査部長は、いつも髪の毛を逆立てています」
問い「見込みクライアントにDDBが立派な広告を作っていることを示すことは簡単だと思いますが、ほかの分野における私たちの効力を証明するにはどうやっていますか?」
ドイル「それを証明するためのプレゼンテーションをするのは大変なことです。でもわれわれはこういっています。『クリエイティブ・ワークのほかに私たちがどんなことをやっているかを知るには、われわれのクライアントをチェックしてみてください』 そして、彼らがそれをやれば、ほとんどの場合結果は手にはいるのです」