創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(41)フィリス・ロビンソン夫人とのインタヴュー(7)「もう一つのお気に入り、『プスッー』」

            Mrs. Phyllis Robinson

出産と子育てに、創業時からのコピー・チーフを勤めたロビンソン夫人が、ネーミングやジングル(fバック音楽)まで手がけたCM秘話を語る。

もう一つのお気に入り、「プスッー」

ロビンソン夫人「もう一つ気に入っているのはクレアロールです。数年前から私が担当していたアカウントでの、『プスッー』というインスタント・シャンプーです。気に入っているわけは、クライアントが私たちに与えた製品アイデアをもとに、最初から最後までやってのけた作品だからです。ネーミングも私がやりました。
アートディクターといっしょにバッケージのアイデアを検討したり、さらにこうしたら売りやすくなるのではないかとクライアントを説得したり、いろいろと苦労が多かったのです。
これは、現代のコマーシャルの要素を生かしてはいましたが、どちらかというと、シンプルでフレッシュで明るい感じのものでした。
また、自分でも納得できる曲を作ったんですよ。たくさんの曲をつくるときに協力してくれるミッチー・リーが、その曲の楽譜も書いてくれました。リーとはたくさんのジングルを作りました」
ロビンソン夫人はテレビ・コマーシャルを2本あげましたが、彼女の仕事には印刷広告のものにも傑作が多いのです。しかし、1人のコピーライターが両方をやる主義の彼女は、「印刷広告やテレビのキャンペーンを作る時には、あなたはそれに感情的な投資をするはずです。つまり、あなたがそれを他のメディアに移入した時に感じる、一種の著作者の誇りといったようなものです。もし、他の人が移入したら、その人はあなたのように感情的に熱中はできません。一級の印刷広告のコピーライターとアートディレクターなら、一級のテレビ・コマーシャルをも作ることは、だれでも学べるはずです。テレビはドラマ性と動き、そしてショー的なある種のフィーリングが必要だということを除けば、要求されることはまったく同じだといっていいはずです」といっています。
(注釈を加えます。40年も前のコマーシャル論議です。あのころ、米国では、テレビ・コマーシャルを映画畑くずれの人たちにまかせることが多く、広告畑の一流のクリエイターたちが、それを自分たちの手にとることを声高に叫んでいた時期でもありました)。


続く


【画面説明】
カメラのレンズを鏡に見立てた女性が、髪にシャンプーを吹きつけ、ブラッシングし、服を着替えてまでをほとんどノー・カットで写す。
アナ「クレアロールから、インスタント・シャンプー『プスッー』のお知らせです。『プスッー』は今までのシャンプーとはまるで異なります。水も石けんもタオルもカーラーもクリップもドライヤーもなんにもいらないのです。また、つけにくく、落としにくいアルコール系のシャンプーとも違います。『プスッー』はインスタント・シャンプーです。吹きつけ、プラッシングし、それでおしまい。『プスッー』ほ吹き付けたら3分待って、ブラッシングしてください。オイル、古いヘアスプレーを落とします。あなたの神はすっかりきれいになります。よい香りをただよわせます。セットもとれません。クレアロールの『プスッー』です」