創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(30) ロン・ローゼンフェルド氏のインタヴュー(4)

DDBのコピーライター指導法


chuukyuu「ロビンソン夫人は、どのように指導してくれましたか?」


ロン「書いたコピーの全部に目を通してくれ、単調な時にはどこがよくないか指摘してくれたり、言葉づかいなども直してくれました。
私にとって、彼女は非常に助けになりました。
また、彼女の作品を読むこともたいへんな勉強になりました。
デビッド・ライダー氏からも、かなり指導を受けました。彼がやっているキャンペーンで、手がまわりきらないときには、代作したこともあります。ライダー氏のスタイルを真似てやったので、ほかの人には私がやったと気づかれなかったようです。
真似たといっても、ライダー氏のスタイルをコピーしたのではありませんよ。あの人の根本的な方法を理解しようと努めた結果、そうなったのです」


chuukyuu「いまのあなたの指導法は?」


ロン「ライダー氏、ロビンソン夫人が私に教えてくれたのと同じような方法をとっています。若い人の作品を読んでみて、きまりきった言葉とか弱い表現、面白くない表現があったら、より良い言い方を、すすめるようにしています。
とくに私は、リズムということを強調します。どんなコピーでもそこにはリズムがあります。こわしてはいけないものです。で、彼らと意見が違う時には、彼らの意見に耳を傾けます。
こうして、私も彼らから学ぶし、彼らも私から学ぶのです。けっきょく、これが教える側にもプラスになるわけですね」
かつて、ロンの部下で、いまはスウェーデンの広告代理店でコピーを書いているサム・カッツくんも、「文章なんか直さないさ。そんなことをしたらそのライターがダメになってしまうもの。徹底的に話しあうんだよ」と、指導法を述べてくれたのを思い出します。

バーンバック氏の指導法


chuukyuuバーンバック会長が話してくれたことで、いちばん印象的な言葉は?」


ロン「問題の核心をつかめ…ということですね。利口ぶった態度をとらない…問題というものを一つだけ離して考えない…クライアントが、これが問題だといって持ってきたものでも、必ずしも本当の問題でない場合がある。
だから、自らすすんで、どこに本質的な問題があるか、なにを最初に解決すべきかを見つける…すると、クライアントが意識していた問題と違う問題があるかもしれない…という助言がいちばん印象的です」


chuukyuu「その助言を、どんな時に思いだしますか?」


ロン「もう、あらゆる時に、です。自分自身がアイデアを求めているときとか、部下を指導している時とか…あらゆる時にです」


DDBの中堅幹部たちの話をきいていると、バーンバック会長がどこかのスピーチでしゃべったのと同じ意味のことをよく耳にします。そこで、いつだったか、ロンに、「DDBでは、バーンバックさんの講演速記でも配布しているの?」と尋ねたことがあります。
「頼めばくれるんだろうが、そんなものを読まなくたって、いつでも、じかに、ビル(バーンバック氏の愛称)とはなしているんだもの」
と答えられました。


>>(5)へ続く

【見出しのみ訳】

ジャマイカの法廷では、そこで働く男性は、
くるぶし丈のガウンを羽織り、
女性の髪みたいにカツラをかぶります。


原文



DDBのみごとなコピーライターたちとの単独インタヴュー(既掲出分)

デビッド・ライダー氏とのインタヴュー
(1) (2)

ロバート・レブンソン氏とのインタヴュー
(1) (2) (3) (追補)

ロン・ローゼンフェルド氏とのインタビュー
(1) (2) (3) (4) (5) (了)

フィリス・ロビンソン夫人とのインタヴュー
(1) (2) (3) (4) (5) (6)

ジョン・ノブル氏とのインタヴュー
(1) (2) (3) (4) (了)