創造と環境

コピーライター西尾忠久の1960年代を中心としたアメリカ広告のアーカイブ

(15)「レイアウトを語る」ヘルムート・クローン インタヴュー(その3 了)

<<ヘルムート・クローン インタヴュー

エイビスは、フォルクスワーゲンの裏返し


問い「エイビスのレイアウトについてお尋ねします。あれもまた、新しいものでしたね」


クローン「ええ。ある晩、ボブ・ゲイジ(DDBのクリエイティブ部門の責任者)と一緒に列車で帰宅したのを思い出します。
当時はみんな、フォルクスワーゲンのレイアウトをやっていました。
そのころは、ヘッドラインが、だんだん小さくなる傾向があって、意味のありげな言葉を3つ並べるのが流行だったんです。
その言葉自体で強い印象を与えるので、非常に小さい文字で組むことができたのです。
ボブ・ゲイジとは、列車の中で、まさに、そのことについて議論したのです。彼は『ヘッドラインを読めなくなる寸前まで小さくするとして、どこまで小さく出来るだものろう?』と聞きました。
で、それについて、ぼくは考えました。
ちょうどその時、エイビスの仕事にとりかかっていて、ページ・スタイルを捜していたのです。ぼくは、ページ・スタイルはとても重要なものだと考えています。
6メートル離れたところから、その広告主の判別ができるようでなければいけません」


問い「単にベージ・スタイルだけでですか? マークやロゴ抜きで…?」


クローン「そう。ページ・スタイルだけでね。フォルクスワーゲンの雑誌広告は9メートルの、エイビスの雑誌広告は12メートルの距離からでも判別できます。


ヘッドラインの話題に戻しましょう。
ボブ・ゲイジが言ったことについて考えている間に、だんだん小さくなって行くヘッドラインばかりに気をとられているのは、バカげているんじゃないかと考えだしたのです。
それで、エイビスでやったことは、フォルクスワーゲンのスタイルをひっくり返すことでした。
ヘッドラインを大きくして、写真とコピー・ブロックの間ではなく、いちばん上に置きました。
写真は小さく、コピーは大きくなりました。


【訳文】
エイビスは、業界で2位のレンタカーです。
それなのに、お使いいただきたい、その理由(わけ)は?


私たちは一所懸命にやります。
(だれでも、最高でないときはそうすべきでしょう)。
私たちは、汚れたままの灰皿をがまんできないのです。
満タンにしてない燃料タンクも、いかれたワイパーも、洗車してない車も、山欠けタイヤも、調整できないシート、ヒートしないヒーター、霜がとれないデフロスタ…
そんな車はお渡しできません。
はっきりいって、私たちが一所懸命にやっているのは、すばらしくなるためです。(省略)

この次、私たちの車をお使いください。
すいていることでもありますし、ね。




Avis is only No.2
in rent a cars.
So why go with us?


We try harder.
(When you're not the biggest,you have to.)
We just can't afford dirty ashtrays.Or half-empty gas tanks.Or worn wipers.Or unwashed cars. Or low tires.Or anything less than seat-adjusters that adjust.Heaters that heat.Defrosters that defrost.
Obviously,the thing we try hardest for is just to be nice.To start you out right with a new car,like a lively,super-torque Ford,and a pleasant smile.To know,say,where you get a good pastrami sandwich in Duluth.
Why?
Because we can't afford to take you for granted.
Go with us next time.
The line at our counter is shorter.


注:エイビス(Avis)・キャンペーンのこのほかの広告は下記リンクより、ご覧になれます。


この作業は、注意深く、意識的に行われ、大変冷静に完成に達しました。
これはインスピレーションによるものではなく、数学的な解決でした。
大きかったものはすべて小さく、小さかったものは大きくしたのです」



図:クローン氏によるエイビスとVWのレイアウトの逆転スケッチ
(注:VWビートル「Think small(小さいことが理想)」の広告はこちらから。)

仕事が遅いのはドイツ人の息子だから…


クローン「ところで、なぜ、ぼくの仕事ぶりが遅いのかと、はっきり聞いてくださっていいんですよ(笑)。
弁解はしませんよ。正当な理由だけです。ぼくはニューヨークっ子ですが、ドイツ式の教育を受けたのです。
で、ぼくは、その教育の最悪の部分の犠牲者であるとともに、最良の部分も受け継いだのでいるのです。
ドイツ人の息子は、自分で自分が正しいのだと証明するまでは、いつでも自分が間違っていると考えています。
不可論者で、すべての事物は証明されなければならないのです。これは、ある種のずぶとさとは正反対の不安感を与えます。
何回も仕事をやり直して、それでもまだ十分の出来ではないと感じるのです。
デイヴィッド・オグルビー氏は、かつてこう言いました。『広告代理店というものは、よい仕立屋と同じに、時間を守るぺきである』
でも、それに対して、ぼくはこういいたいですね、『ぼくはローマの外で、最上の仕立屋を見つけた。彼はいつでも遅れる!』って。」


問い「あなたは仕事を楽しんでいますか?」


クローン「わかりませんね。ぼくの思考は、行きつ戻りつしているんですよ。
広告はくだらない。広告は偉大である。広告はまるで必要ない。広告は現代最も活力のあるアートの形式である。
で、週によって考えが変わるんです。どちらも真実だとおもいますがね。
ぼくは、自分の人生の計画を立てるということをしませんでした。『2年間これをやり、3年やって、そしたら副社長になれるだろう。それから…』というような計画は、ね。
ありふれた選択の自由なんて、ぼくは聞いたこともありません。
ぼくがしてきたことっていえば、ボードに鼻をくっつけて熱中していただけです」