創造と環境

コピーライター西尾忠久の1960年代を中心としたアメリカ広告のアーカイブ

(16)ソニーの広告(2)

同じく、5インチ・テレビ


ドライヴ・イン テレビ

キス・シーンを観るもよし、演ずるもよし、5インチ・ソニーは車内をほどよい明るさにします。充電可能なバッテリも利用でき、走らないで抱きあってばかりいるドライバーのためにはAC電源プラグもあります。で、映像は? だいじょうぶ。寿命が永く非帯熱のソニートランジスタ24石と43インチのアンテナと非歪ブラウン管のおかげで、すばらしく鮮明に受像します。警官にライトで照らされてもだいじょうぶ。それより、つぎの点を考えてください。テレビに堪能したら、グラブ・コンパートメントに入れてしまえばいいって点を---。
5インチ どこででも ソニーテレビ


Drive-in Television

For smooching'n watching, the 5 inch Sony operates off your car lighter. It also plays off a rechargeable battery pack. As well as an AC wall plug for non-driving smoochers. And the reception? Thanks to the Sony's 24 long-living heart-free transistorws, together with its 43 inch antenna and non-distrong picture tube, you get a picturethat's perfectry brilliant.Even with the policeman's flashlight shining in. And think of it: when you've had about all you can take of television, just stick it in your glove compartment.
5 inch anyplace Sony-TV

ヴ-イン(ve-in)とヴィジョン(vision)の音韻がすばらしい。
【蛇足】右側の初老男性、催促がましいポーズ。演出したたか(写真をクリックで、拡大)。
あのシチュエイションですることに、年齢はいいっこなし、か(苦笑)。


>>ソニーの広告(1) (2) (3) (4) (5) (6)

(2)Creativeに考えるには---「福耳コラム・出張ゼミ」


(2007.3.27)

  三宅 秀道 M(横浜市立大学 中小企業の研究開発戦略 講師)
  今枝 佑介 I(横浜市立大学 経営戦略演習ゼミ 学生 第3学年)

◆イメージを自分の持つ知識や経験と組み合わせる

Mid:chuukyuuさんとのご縁があって、広告業界に興味があるというあなたを教え子として紹介して、この「創造と環境」を読んだアドマンの方々にお話を伺う機会を頂いたわけですが、それをしたあなたがいま、professionalなクリエイティブの方々にインタビューしてきて、特に印象に残っていることは?」

I 「AETに来る前に、イメージしていた広告制作は、コピーを考えたり、グラフィックを考えたりといったcreativeな仕事が大半を占めるものだと考えていました。
多くのインタビューを通じて、学んだことは、広告制作には、広告する商品やサービスの特徴やそれに関わる様々な情報を自分の中に取り込む、イメージを作り上げるために調査・分析もcreativeな仕事と同じくらい大切なことであるということです」


M 「まだ、一般論を言っている感じがしますね。」
あなたの話を聞いていて、思うことは、creativeな仕事という概念を持っているように思います。
僕のcreativeにおける考え方は、仕事の名前がcreativeじゃなくて、仕事をcreativeに行うというイメージなんです」


I 「本日までご縁があって、AETの方々にインタビューさせてもらい、広告制作の仕事についても、少しながら垣間見ることができました。
広告制作には、作業とcreativeな仕事の二つに大きく分けることがで、最近は、メディアも増えたので、作業の面が非常に多くなってきている---とお聞きしました。その話からcreativeは、一種の仕事と考え、この表現を使ってしまうのですが、
正直、creativeの考え方を言葉で説明するのは、難しいですね」


M 「そうですね。でもできるだけこのsessionで頭の中をかき回せたらいいと思うんです。
creativeな考え方を語る際に、いいお話があります。
台東区墨田区辺りの町工場で、ユニークな新商品が出たというケースをよく聞きに行くと、大抵、何十年、真面目に、ものづくりをがんばってきた職人さんがコスト競争で中国に負けて、行き詰ったという状況に、ものづくりを何十年、ずっと横で見ていて、手伝っていた社長夫人の
〔ここ、ちょっと変えたら、おしゃれで便利になるんじゃないかしら〕
と発言したアイデアが、breakしたというケースをよくお聞きしました。
このケースを僕なりに分析にしますと、社長夫人が会社の危機的状況に立たされて、なんとかしなきゃと思い、頭の中でずっと練っていたものが急に出るようになる。
はたからみると、社長夫人が一念発起で、とてもcreativeなことをしたように見える。
一方、職人さんは、効率的な仕事をするために今している仕事を必要な知識と一緒にツリー上に分類してしまう。
社長夫人は、仕事を目的意識やある決まった知識を一緒にして、分類するということは、しないで、そのまま受け入れ、自由に組み合わせをすることができる。
これがこのケースの肝となる考え方だと思うですね。
それは、広告制作の仕事をされている方々にも当てはまると思う?」


I 「僕もその思考法は、広告制作における創造の基本的な枠組みにも当てはまると思います。広告制作は、広告する対象商品やサービスの膨大な情報を収集し、自分の中に取り込み、イメージを作り上げる。
しかし、クライアントの注文あったり、直接的に商品を扱うのではないので、何年もかけて、経験し、情報収集や分析に知識を分類するわけにはいかない。
客観的な視点でできる限り詳細まで分析し、培ったイメージを自分の持つ知識や経験と組み合わせ、新しいアイデアを生み出していくのだ思います。


◆〔幸せなブレスト〕


M 「ものづくりにせよ広告づくりにせよ、もともと、複数の人間を「組織化」するということ自体が、〔本質的に〕自分の仕事の範囲を明確にしたり、他の誰かと権限を分担したり、〔それは自分のやるべきことではない〕と決めたり、誰がやっても差が出ないように〔事前に成果を明示したり〕〔マニュアル化〕したり〔ルーチン化〕したり、およそ創造的にはならない方へばかり働くものだと思うのですね。
それでもクリエイティブな成果を上げるために〔発想を柔軟にしよう〕なんてことは誰もが言いますが、それだけではお題目に過ぎません。
じゃあ〔組織化〕なんてしなければいいじゃん! と小規模企業を研究してきた身ではいいたくなる(笑)


でもそういう小組織では安定して大きな仕事はできない。だから「創造と環境」にあるDDBの事例は、ある程度の規模でありながら〔できるだけ階層化・硬直化を避けた〕〔近代組織っぽくない環境をいかに維持するか〕、ということについては格好のケースだと思います。
chuukyuuさんが取材した38年前の段階ではそれが成功していて、でもそれはバーンバックさんの個人的な性格に多くを負っているように見えますが、バーンバックさんが組織を去り、規模もさらに拡大したいまはどうなっているのか?とか、知りたいところです。
最初は規模の小ささや経営者の人格のおかげで維持されている〔近代組織っぽくない環境〕も、ほおっておくとどんどん〔近代化・官僚化するのが〕自然です。
その方が合理的で組織の業務処理コストを減らすからですが、その代りにクリエイティブな成果が上がらなくなることを〔組織がちゃんと動くためには仕方ない〕と運命論的に受け入れたって無意味です。
じゃあ、どうそれに対処すればいいのか? 僕はそれについては、アドマンの方々に、〔幸せなブレーンストーミングの経験って、ありますか?〕と伺いたいのですね。


創造的製造業企業の調査をしていても、あるいはそれを理論としてまとめようとしていても、企業の方や研究仲間たちとテーブルを囲んで、激論になることがあります。
そうやって自分の見方を誰か他人にさらして、がんがんツッコミを入れあう、ということをしていると、時々ですが、(あ、いま、俺のもののみかたが格段にグレードアップした! いままで説明がつかなかったものがつくようになったかも!)と叫びたくなることがあるんですね。
単発的な一つのアイデアではなくって、世界全体を見る視点が高度になったというか、いろんなことが一度にわかる、というような。
僕はそれを〔幸せなブレスト〕と呼ぶのですが、もし組織のメンバーの多くがそういう個人的体験を経ていれば、組織そのものがシステム的に整備されても、それを構成する人たち自身が是々非々でセクションや既成概念の壁を「建設的に」越えたり壊したりする、そのことが可能だと思うのです。なにしろそれは仕事をしていてもすごく〔快感〕ですから。それを不幸にして経験したことがない人は、いつまで経っても 〔創造〕を怖がってパフォーマンスも制約されるんじゃないでしょうか。
その意味で、「創造と環境」が提起している問題は、近代企業組織の永遠の課題だと思います。